先にお風呂を借りた。好きにしててと言われたものの、落ち着かない。
 岸さんは入れ違いでお風呂に行っている。

 岸さんのマンションは生活にいるものが適所に配置されていて、人の住まいという感じがした。住み心地のよさそうな空間だった。

 漏れ聞こえていたシャワーの水音が止んだ。
 私は持ってきた荷物からオールインワンタイプの美容マスクを引っ張りだした。

「岸さんも貼りますか」

「別にいい」

「もう封を切っちゃった」

 着替えを済ませてこっちをひょいと覗いたところをつかまえて、美容マスクを貼ってあげた。岸さんは顔にその白いシートをつけたままドライヤーで髪を乾かしはじめた。
 同じソファに座ったところで美容マスクを剥がした。岸さんのと自分のと。
 視線が合うだけで面映ゆい。

 そのうちに手を取られ、導かれて岸さんの頬に触れていると、岸さんが近づいて唇にキスを落とした。
 私の手は岸さんの顔に留まったままだった。私から岸さんを求めたみたいな構図になっている。