「考えたうえで、まだ一緒にいたいっていうのなら、いいのでは?」

「少し待ってて。支度するから」

「五分ね」
 
 それは無理、って笑いながら私は車を降りた。
 思いついたものを大きめのバッグに端から詰めていく。途中で一度スマホが鳴って、遅いってメッセージが来たからタイムアップ。
 けらけら笑いながら戻ったら、岸さんに怪訝な顔をされた。

「なんでそんなに楽しそうなの」

「荷造りって楽しくないですか? あれもいるーこれもいるーって。あ、メイク落とし忘れた」

「どこか寄るよ。他に足りないものないか、考えておいて」

「ここで荷物を開けろと?」

「そうは言ってない」

 簡単に思いつくものならそもそも忘れないのに、岸さんは理不尽なことを言う。でもそこが岸さんらしい。
 その受け答えを聞きたくて、私は張り切って軽口を叩くのだ。