家の前についた。

「俺が怖くなった?」

 帰りの車のなかで一言も喋らなかった私を心配したのか、岸さんはそんなことを聞いた。
 私は頭を振った。

「なにを考えている? 言って」

「あー、帰るの嫌だなあ。まだまだ一緒にいたいなあ!」

 でももう家に着いちゃったし、と車窓に凭れかかる。

「家に来る? 泊まる?」

「岸さんのとこ?」

「君の家でお茶飲んで帰ってもいいけど、そういう話? 時間も変だろ。ご両親いらっしゃるんだろ」

「ええまあ、そうですよね。変ですね。ダメじゃないけど違う気がする」

「それはまた別のときでいいんじゃないか」

 軽く混乱して岸さんを見あげた。

「だから、俺の部屋に来たら?」

「そういうの軽率だって怒った人が言うんですか」

「……言ったな。言った。ちゃんと覚えていてえらい。これでもう間違えない」

 すっかり子供扱いだ。