岸さんの目が据わっている。怖すぎる。

「軽率すぎる。それ、絶対行ってはいけないやつだ。もっとひどい目に遭ってたかもしれないって、わかってる?」

 岸さんにこんなにきつい口調で言われたのは初めてだった。

「わかってるし。そんなことよりも、ずいぶんと宏臣に見下されているのがわかってそっちのほうが辛かった。岸さんだったら絶対そんなことないから」

「何故俺に話そうと思った?」

 なにを言っても怒られる気がした。
 俯いて、唇を固く引きむすんでいると、横でため息をつかれた。

「怒らないから聞かせてよ」

 岸さんの手が私の手の甲に触れた。

「ばれると思ったから?」

「岸さんにごめんって思ったの。裏切っているみたいで嫌だった。岸さんが大事なのに、全然関係ないところで私なにやってんだろうって、なんてことしちゃったんだろうって……え」

 触れていただけの手が重なった。
 思わず見上げると視線も重なった。