「名取さんには大いに困ってほしい。俺は別に困らない。好きに、やりたいようにするだけだ」

「その言い方」

「要するに、少しは俺とのことも考えてほしいって意味」

 強引な主張。
 けれど、それに返すも返さないも私が自由に選べる。
 視界が晴れていく。
 言うも言わないも、好きにしていいんだ。


「それで、名取さんの話したいことって」

「あー、別に大したことでは……」

 じっと待つような目で見られて、私も口を割るしかなく。

「実はあの、私、キスされてしまいまして」

「誰に」

「例の、元・同級生」

「最近?」

「えっと」

 割ったら割ったで、追及の手を緩めない岸さんにしどろもどろになりながら全部話してしまった。伏せておいてもいいことまで話したかもしれない。