まさか仕事ぶりを褒めそやされるとは思っていなかった。
 経験が先輩たちより浅いぶん、どう描くかを意識してきただけだ。ただそれだけだ。

「とはいっても印象いいだけでどうこうしようなんて思わない。同じ会社じゃなかったらこんなやりとり、終わってる」

 終わっているはずなのに、と岸さんは呟く。そのまま続けた。

「細い繋がりにすがりつくように、また会いたいと思っている。これはなんなんだ、って話になる」

 私のことを言っているのかと思った。私も同じ気持ちだった。
 そこで岸さんがふっと息を吐いた。

「昨夜は自分を抑えきれなかった。君のことがたまらなく愛しくなっていく。俺はどんどん欲張りになる。このまま同じように一緒にいたら、俺はまた君を抱きしめるよ」

「岸さん……」

「そうやって君を困らせるんじゃないかと思った。だったら、気持ちを黙っているより言ってしまおうと思った。だから、言った」

 岸さんはこちらを向いた。