「よかった。聡美ちゃんが今日のことすごく気にしてたみたいだから、めいいっぱい可愛がってあげる」
「やっぱ帰る!」


逃げようとしたけど、すぐに捕まった。


「ダメ。俺が聡美ちゃんを嫌うなんてありえないってわかってもらうためなんだから」
「わかってる!ちゃんとわかってるから」


必死になって抵抗すると、悠之介は落ち込んだような表情をした。


「……やっぱり嫌なんだね」
「そうじゃなくて!」


ただ恥ずかしいだけだと、どうしてわかってくれないのか。


「じゃあ、ご飯食べるためにおいで」
「いや、それは無理があると思う」


もっとこう、自然な流れというものがあるはずだ。
それを目的としていると知っているのに、部屋に上がれるか。


「……聡美ちゃんの頑固者」
「悠之介は恋愛下手」
「聡美ちゃんには言われたくないなあ」


……たしかに。


「じゃあここでご飯にしよっか。店の中だと手は出さないから」


その言葉は信用できる。


「わかった」


結局私はいつもの席に座った。


「そうだ、聡美ちゃん。次の休み、暇?デートしよう」


料理の準備をしながら聞いてきた。


「……またデートしてくれるの?」
「何度でも誘うよ」
「またドタキャンするかもしれないのに?」