聖夜の過去なんて、聞きたくなかった。



聖夜とはもう付き合えない。



聖夜が私に近づいて来るたび避け続け、レジに入った時も聖夜を無視。



「百合の話を信じてるのか。」



信じるもなにも、本当の事でしょ。


これ以上私をバカにしたら、許さないから。


「今は仕事中だから、その話はしたくない。」


休憩をとって、圭吾君のいる事務所へ行った。


「そろそろ、店長が来る頃だと思いました。」



圭吾君には何でも、お見通しのようで恥ずかしい。



「聖夜の事ですね。」



「まぁ、百合が言ったこと半分はホントかな。驚きましたか。」



「私は30才だと言うのに、恋愛経験も少ないから、聖夜が理解出来ないのかな。」



「聖夜の事を嫌いに、なりましたか。」



どうなんだろ。



そもそも、聖夜が好きで付き合ったのか、さえも分からない。



「聖夜の事好きなのかも分からなくて、何となく付き合う事になっちゃったから。」


自分で自分の気持ちが分からなかった。



聖夜を嫌いではない。



だけど、好きなのかと聞かれたら、好きだと答えられるのか。



「聖夜は本当に店長の事が好きだと思います。聖夜が一人の女に、一生懸命になるのを見たのは初めですし、店長は愛されてますよ。」


聖夜の愛情を強く感じるから、いい加減な気持ちではないと思う。



聖夜の気持ちは本気だと思うし、いきなり抱いたりもしなかった。



口は悪くても、私を大切にしてくれてるのが分かる。



本当は聖夜を信じたいと思ってるけど、上手く気持ちの整理がつかない。


これはきっと、私の問題。



恋に臆病になってた気持ちが、少しは変わったと思ってたのに、これじゃ何も変わっていない。


聖夜のせいにして、私はどうしたいのだろ。


結局前に進めてはいないのだ。