聖夜が二度目のため息をついた。



そのため息は何。



「さっきから気になるんだけど、その潤んだ目で見つめないでくれるかな。そう言うのに弱くてさ。男はみんな自分に気があるんじゃないかって、勘違いするよ。」



何を言い出すかと思ったら、そんな事。



私はいつもこんな目なんです。


昔からいつも泣いてるみたいに思われてしまう為、女友達が出来なかった理由の一つで、美莉は狡いとよく言われた。



その目で見られたら、どんな男も落とせるとか言われたけど、一度もそんな事をした覚えはない。


潤んだ瞳の何処がいけないの。


本当に嫌になる。


聖夜に弱点を知られたみたいで、おもしろくなかった。


「聖夜君、気にしなくで下さい。私の目は常にこんな感じですから。」



聖夜は気まずい顔するし、もう、一体なんなのよぉ。



聖夜に振り回されて、イライラは増すばかり。



「視力、悪いの? 」



「いえ、普通です。」



「目薬さしてるとか? 」


「いえ、さしてません。」



「ならどうして、潤んでるの。」



「さぁーって言うか、レジを教えなさいよ! 」



圭吾君が心配そうな顔で近付いて来た。



「お願いです。聖夜君を誰かと変えて下さい。訳分からない事ばかり言って、仕事教えてくれないです。」



圭吾君が落ち着いて下さいと言うけど、無理。


もう、聖夜の顔は見たくなかった。



真面目に仕事を教えてほしいだけなのに、どうしてこんな事になってしまうのか。


これ以上聖夜に近付くのが怖い。



聖夜もただの男なんだと思えた。



逃げてしまえば楽になれるけど、これでは又同じ事の繰り返し。