何をやっても上手くいかないし、このマンションも父親の物で、定職についたこともないが、不自由なく優雅に生活出来ていた。


ブランド物に埋め尽くされたこの部屋。


父親は幾つかのビルを持ち、今はコンビニ経営に力を入れている。


いわゆる私はお嬢様で、エスタレー式の学校に通い、幼稚園から大学迄、受験もせずに過ごして来たのだ。


何もしなくても贅沢な生活が出来ていたから、働こうなんて思いもしないで、今日まで過ごして来たと言うのに。



ある日突然、父親から電話が来た。


「おまえも30才になったから、少し落ち着いたらどうだ。新店のコンビニの店長を任せたいと思う。」


朝早くから、何とぼけたことを言ってるんだろ。


私にコンビニの店長なんて、勤まるわけがない。


自慢じゃないけど、まともに働いた事ないし、このままで充分楽しい生活が送れてるわけだし、コンビニで働くなんて、絶対ごめんだ。


何処に就職しても3日も勤まらない私が、人を使う店長なんて、絶対無理に決まってる。


「悪いけど、無理。」


「コンビニの店長が勤まらないなら、マンションを出ていってもらう、生活費も一切やらない。覚悟決めて働くんだな。」


父親はそれだけ言って電話を切ってしまった。


里中美莉30才、大ピンチです。


父親には絶対逆らえない。


働く気のない私をみたら父親も諦めるだろうと、軽く考えていた。

何とかなると。


今迄も何とかなったから、絶対大丈夫だと自分に言い聞せて。

私に甘い兄が助けてくれるだろうし、姉も味方になってくれると思う。

母も末っ子の私にはかなり甘いのだ。


だから大丈夫、絶対大丈夫。


この快適な暮らしを崩壊したくはない。


その夜は中々眠れなかった。


明日はバカにされないように、オシャレして行こう。


まだ、まだ、いけるんだから、なんて思うことが、もうオバサンなのか。


今日はお肌の為に早く寝よう。