アンティーク



「じゃあ、私はこっちなので。今日はありがとうございました」

大学へ到着すると、当たり前だが彼女は音楽学科の方へ行ってしまった。

俺は、将生の横でそんな彼女の背中を見る。

「なに、惚れたの?」

「まさか。ただ、彼女も将生と同じだなあって」

「俺と?」

将生は、どこが?とでも言いたそうな顔で俺の方を見た。

内心なんかは分からないけれど、俺がハーフだからって態度が違ったりそんな風には見えない。

そういえば、この前留学生が言ってたな。
みんな、もっと普通に話しかけてくれればいいのにって。

日本に来て数か月の留学生ですら感じるその感情は、俺は痛いほど分かる。

だからこそ、こういう、将生のような存在が俺にとっては心の拠り所になるんだ。