アンティーク


「将生、さん」

「なんで逃げんの?」

つい、周囲にあの人がいないかを、首を動かして確認してしまう。

「その……」

「なに?」

将生さんは、手首を放してくれない。

だから、言葉で突き放すしかないと思った。

「将生さんとレオさんは、私とは違う人種だから……」

「は?」

「私みたいに、人から白い目で見られたり、そういう経験ありませんよね……? 将生さんに向けられる目は、眼差しの目です。私に向けられる目とは質が違うんです。だから、こんな私なんて近づいちゃいけない。私は、2人のように光の中を歩いてないんだから」

無自覚だった私の本当の気持ちが、湧き水の様に溢れてきて、それを目の前にいる将生さんに浴びさせてしまう。

きっと私は、羨ましかったんだ。

2人のことが、輝いている2人のことが、心の底から羨ましくて、それに憧れていたんだ。

私みたいな暗くてじめじめしたところでしか生きてこなかった人間にとって、2人の存在は遠くで輝いている太陽のような存在なんだ。

「そうかよ…………」

ようやく、私の手首は解放される。

待ち遠しい瞬間のはずだったのに、心を覆うのはグレーの色で、それはどんどん広がっていって私の気持ちをどうしようもなくさせる。