アンティーク


ありさは、「ちょっと飲み物でも買って来るね」と言うと、席を離れた。

「あなたね」

その直後だった。

私の耳に、その鋭い声の言葉が聞こえてきたのは。

「え?」

その声のする方を振り向くと、見た事のない女の人が立っており、多分ここの大学の学生だろうということがその荷物を見て分かる。

しかも、おそらくその人は美術系の人。

「レオくんと将生くんに近づかないで。誰も女の人が近づかないし、女嫌いって言う噂まであるから、みんな告白しないで見てるだけなのに」

そんな噂があることを、初めて知る。

「なんであなたなんかが、しかも音楽学部でしょ? どうやって2人に近づいたのよ」

「誰?」

彼女の後ろに、飲み物を買い終わって戻ってきたありさが立っていて、その顔は私が見た事のない表情をしていた。

それは一言で言うと、「冷酷」そのもの。

友達の私でさえ、背筋が凍ってしまうようなその表情に、ありさの表情を見たその人もたじろいでいるのが分かった。

「あ、あんたこそ誰よ」

「この子の友達だけど」

「それなら、この人があの2人にどうやって近づいたかも知ってるのね」

「だいたい、あなた、この子が近づいたって言うけど、あの2人が私の友達に近づいたかもしれないじゃない。勝手にそこ決めつけないでもらえる?」

ありさは、彼女に対して一切怖気づくことなくその言葉に反論した。