眠たい目をこすりながら、腕を伸ばしてストレッチをした。
朝早くというのはきついが、しかしなかなか興味をそそる授業の内容で、途中からは教授の話を聞き入ってしまった。
「あの建築、観に行ってみたいな」
授業で紹介された建築について、将生が話してくる。
「そうだね、イタリアだよね。イタリアは何度か行ったことがあるんだけど、あれは観たことなかったな……」
「今度、行こうぜ」
そんな、男と男の約束をする。
将生との旅行……きっと楽しいに違いない。
イタリアだけじゃなく、その周辺の国の美術館巡りなんてのも、いいかもしれない。
それに、ヨーロッパにはアンティークショップが多くある。
あと、将生の好きなサンドウィッチだって豊富に種類がある。
そもそも、街全体がアンティークだ。
そんな旅の妄想をしていると、将生の一言でそれは幕をぴしゃんと閉じる。
「神崎玲奈」
「え?」
あまりにも唐突にその名前を言うもんだから、いかにも動揺したような声を出してしまう。
「やっぱ、……好きなんだろ?」
「……彼女には、好きな人いるから」
「そっか……」
将生は、知っているのかどうなのか、それ以上なにも言わなかった。



