「じゃあ、着替えてくるから」

「おお」

着くと、いつも俺は将生を先に店に入れ、自分は店の裏の入り口から中に入って準備をする。

今日は、少し課題に時間をかけすぎて、遅刻ギリギリになってしまった。
急いで準備をすると、店の方へと顔を出す。

すると、俺と同じハーフの店長も店内にやってきた。

「そんなに慌てないで、ゆっくりでも大丈夫じゃよ」

「はい、今日は友人が来てるんです。というか、今日も、の方が正しいですかね」

「ああ、将生くんかい」

そう笑って言う店長の顔は、いつも通り穏やかで、一体どんな人生を送ればこんなにも温かいオーラを纏うことが出来るのだろうと、俺はふと考えてしまう時がある。

「はい」

店長にも、すっかり顔を覚えられた俺の友人は、今日も店の中をゆっくりと歩いてそのアンティークを見ている。

その姿を確認し、俺はレジへと向かった。

すると、同時に扉が開き、誰かが来たことを知らせる音が店内に鳴り響いた。

「あ」

俺は、知っている顔についそんな声が出てしまう。

彼女にとっては二度目でも、俺にとっては三度目だ。

「こんにちは」

また、彼女がこの店に来た。
今は、楽器は背負っていない。

「知り合い?」

俺と彼女の顔を交互に見て、将生が俺のところにやってくる。

「あ、いえ。ただのお客です」

すると、俺の代わりに彼女は少し恥ずかしそうに答えた。