俺は、それを半分に切った。
小さく切られた柔らかい白身と、ペースト状になった黄身がパンに挟まれて、またそれとマヨネーズが良い具合に混ざり合っており、いい匂いを漂わせる。
一口分を口に含むと、マヨネーズの香りがふわっと口の中に広がった。
「très bonだね。すごく美味しい」
「出た、レオのフランス語」
フランスと日本のハーフの俺は、子供の頃にフランスに住んでいて、もちろんそこではフランス語を話して生活していた。
そのせいか、感情が押し寄せてそれを表現するときに、たまにフランス語が出てしまう。
「これははまりそう」
いつも将生が食べているのを見ているだけだったけれど、実際にそれを味わうと、また見た目とは違った美味しさが伝わってくる。
「だろ?」
将生は、俺が半分に切った残り半分の卵サンドを食べ始めた。
「で、惚れたの?」
「だから、違うよ」
いきなり話がサンドウィッチから玲奈さんに戻るもんだから、俺は少しだけ慌ててしまった。
彼女はたしかに可愛いし性格も良さそうだけど、それと恋愛はまた別。
あくまで、彼女は僕のアンティーク仲間だ。



