アンティーク

「じゃあ、行きましょうか。」

仕事を終えた俺は着替えをして、店内にあるアクセサリーを見ていた彼女に話しかけた。

彼女は、「はい」と言って店の外に出ようとする。

俺はそんな彼女よりも先にドアに近づいて、それを開けた。

店長から、これだけは、言われていること、それが、どんなお客様が帰るときでも、決してそれが男性であってもお客様にドアを開けさせない。

「ありがとうございます」

「いえ」

彼女に続いて、自分も外に出た。

空は少し薄暗く、もう夕日は隠れている。

もう少し前に出ていれば、きっとオレンジの輝かしい空を見れたかと思うと、少しだけ残念な気持ちになった。

「この前の、レオさんの友人は、どんな方なんですか？」

彼女は、まず初めにそれを聞いて来た。

「将生は、俺の大切な友人で、とてもいい奴ですよ。まあ、少し変わっているところもありますが」

こんなことを聞いてくるなんて玲奈さんは将生に興味があるのだろうか、という問いが頭の中でぐるぐるしている。

なんとなくだけれど、その顔に色味があるようにも見えるし、いつもの玲奈さんのようにも見える。

もし、夕日が出ていたら僕の百パーセント勘違いともいえるが……。

今はあいにく、もうその夕日だって海に沈んでいる。

だけど、もし今僕が感じているのがそうなら、将生はあの通り女の人に興味がない。

この前みんなで帰った時から今日まで、将生が玲奈さんの話をすることはなかった。