おやつのプリンを食べ終えたタイミングで、翼くんが来た。
「翼くん」
「ん?」
「クリスマス、みんなで一緒に過ごしませんか?」
「みんなって?」
「レオくんと、将生さんと」
「…………いいの?」
「うん、どうせならみんなで過ごした方が楽しいかなと思って」
「そうだね、そうしようか」
翼くんは笑って言う。
「それにしても…………」
彼は、何かを言いかけて結局「ううん、なんでもない」とその話題を自分の中に仕舞ってしまった。
翼くんの表情から、何が言いたかったのかを何も読み取ることが出来なかった。
「そう言えばこの前、ピアノ科の女の人に声かけられてさ、2人でどこか行きませんかって」
「いいじゃないですか。翼くんはなんて答えたんですか?」
「とりあえず、オーケーしたよ。これもきっと玲奈と出会えたお陰だ」
翼くんの新しい恋の予感に、私は素直に嬉しいと感じた。
みんな着実に前に進んでいて、もしかしたら一番その場で足踏みをしているのは私なんじゃないかとも思えてくる。
「じゃあ、クリスマス、もしその人と過ごすことになったら言ってくださいね」
少し寂しいけれど、もしそうなったら私も嬉しい。
「うん。分かった」
私も、その女の人みたいにレオくんを誘うこと出来たらと思うけれど、そんな勇気なんてない。
「じゃあ、練習しようか」
「そうですね」
私たちは、いつもの通りにコンクールに向けて練習室へと向かった。



