アンティーク


「男の人なら、こっちのほうがいいと思いますよ」

俺が選んだのは、男の人、というよりも自分が欲しいものであった。

「じゃあ、こっちにします」

「ラッピングしますね」

「ありがとうございます」

俺は、彼女の顔をちらちらと見ながら、彼女がオルゴールをあげる相手はどんな人なのだろうと考えてしまう。

彼女と同じ、音楽をしている人なのだろうか、それとも芸術には全く無縁な人なのだろうか。

そんなことを思いながら、青を基調とした布でそのオルゴールを包んでいく。

そうして最後に、紺色のリボンをそれに飾って完成した。

「こんなかんじでいいですか?」

出来上がったプレゼントを彼女に見る。

「はいっ」

紙袋に入れて、彼女にそれを渡した。

俺は、素早く会計を済ませる。

「レオさん、これ」

すると、あろうことか彼女は俺がさっきまでラッピングをしていそのたオルゴールを渡してきた。

「すみません、恋人へのプレゼントっていうのは嘘で。今までのお礼です。この前、オルゴールが欲しいって言ってたから……」

確かに、オルゴールを欲しいということはこの前に言った。

しかし、彼女の言う今までのお礼、を考えてみるがいまいち分からない。

けれど、このプレゼントは単純に嬉しかった。

「ありがとう。あ、もうすぐ終わるから待ってて。送っていくよ」

「え、いいんですか?」

「このオルゴールのお礼です」

と、紙袋を指さしてそう言う。

そう言うと、彼女はふふっと笑う。

そして、じゃあ待ってます、と言って店内を再び歩き始めた。