私のことを抱いている翼くんの身体は震えていて、私は彼のことを拒んではいけない気がした。
もし、拒んでしまったら、彼がいなくなってしまいそうだったから。
脆いガラスのように、粉々に砕けてしまいそうだったから。
そのくらい彼の存在は儚げで、手を離してはいけないと本能が私に言う。
でもそれと同時にレオくんの顔が頭に浮かんできて、私はどうしたらよいの分からなかった。
時間が必要だと思った。
だから、彼にあんなことを言ってしまった。
駅前のカフェで、ホットコーヒーを飲みながらありさと話をする。
全てを、隠すことなくありさに言う。
「それは同情だよ」
ありさははっきりと言った。
「分かってる。でも、…………彼には私にとってのありさのような存在もいないし、1人なの。そんな彼のこと、放っておけないよ」
「じゃあ、玲奈の恋はどうなるの? それで、いいの? 彼の近くにいるっていうことはレオさんのそばにいられるかどうか分からないんだよ? 自分の気持ち、犠牲にするの?」
私は、それに何も言えなかった。
ただ、翼くんを見ていると昔の自分を思い出してそれは心をきゅっと締め付ける。
「あ……」
翼くんからメッセージが届いて、明日の練習は20時からにしようというものだった。
「明日、レオくんに会いに行って、自分の気持ちちゃんと整理する」
「うん、絶対そうしたほうが良い。もしどうしても答え出せなくなったらまた私に言って」
「ありがとう」



