「う……ん」

翔馬君の手は、優しくしてあたたかい。
そうだよね。また会えるんだから
私は、涙を拭きながら一生懸命頷いた。
すると翔馬君は、ポケットから何かを取り出すと
私の手に持たせてくれた。

「これは……?」

「電車で開けろよ。恥ずかしいから」

「う、うん。ありがとう……」

何だろうか?小さな袋に入っていて
カサッと音がした。何か入っているようだ。
プレゼントだよね……これ?
翔馬君をみると耳まで真っ赤になっていた。
何となく中身が分かりこちらまで頬が熱くなってしまった。

「菜乃ちゃん。そろそろ時間よ!」

「あ、はい。じゃあ……翔馬君。皆さんも……」

「またな。菜乃ちゃん」

私は、大きなカバンを持ちお礼を言うと翔馬君から離れた。
皆は、手を振って見送ってくれる。翔馬君も
私は、涙を出るのを必死に我慢して笑顔で別れた。
そして改札口を通りホームに向かった。
さようならと告げながら……。

名古屋行きの電車に乗ると近くの座席に座った。
私は、すぐに荷物をおろすと翔馬君がくれた袋を開けた。
その中は……やっぱりネックレスだった。
可愛らしいシルバーのハートの形をしており
真ん中に赤いビーズみたいな石が付いていた。
値札まで付いている……。1500円ぐらいで
十代の子向けのネックレスだ。

これを翔馬君が買ってくれたのだろうか?
私のために……。
そう思うと胸がキュンとなって嬉しかった。
どんな気持ちで、これを買ったのだろうか?
恥ずかしかったかもしれない。でも……やっぱり嬉しい。

私は、そのネックレスをギュッと握り締めた。
まるで翔馬君に守られて一緒に居るみたいだ。
きっと大丈夫。また会える。そう思った。
しかし現実は、残酷なものだ。
無事に新幹線に乗り両親が居る東京に着いた。
自宅に帰ると母親に驚くことを告げられる。

「えっ……岐阜にもう行ったらダメって
どういうこと?認めてくれたんじゃないの?」

「話は、お祖母さんから聞いているわ。
ただダメと言ってもあなたは、言うことを聞かないと思って。
それ以上あそこに居たらお祖母さんに迷惑になるでしょ?学校だってあるし。
大学や就職を考えると東京がいいわよ」