それからしばらくケーキを手伝ったら
休憩時間に美紀子さんが私と翔馬君用に
カップケーキと紅茶を出してくれた。

「えっ……いいのですか?」

「フフッ……いいわよ。今日手伝ってくれたお礼よ!
ありがとね。あ、こっちは、頼まれた物ね」

そう言うと祖母に頼まれた抹茶ケーキが
入った小さな箱を渡された。
あ、そうだった。忘れていた……。

「ありがとうございます」

本当にいいのだろうか?
ほとんど邪魔しちゃったものだが……。
しかもカップケーキも私が失敗したのではなく
綺麗な仕上がりのやつだった。
逆に申し訳ないぐらいだ。

私は、申し訳なさとカップケーキが
食べられることが嬉しくて複雑な気持ちになった。
すると翔馬君は、そんな私とは関係なく
カップケーキを食べ始めた。

「うーん。うめぇ……菜乃も食べてみろよ?
めっちゃくちゃ旨いからさ」

「えっ……う、うん。いただきます」

翔馬君がそう言うので私は、
慌ててフォークを取ると一口食べてみた。
甘さ控えめでふわふわのスポンジ。
それに生クリームも上品な味わいだった。

「本当だ……美味しい」

カップケーキは、とても美味しかった。
これを私が手伝ったとなると何だか
嬉しい気持ちになった。貴重な体験をした。

「なぁ?旨いだろ?」

「うん。美味しい……」