「……暇。莉央さん、暇です」
「うーん…」
こんなこと、莉央さんに言ったってどうにもならないとはわかってる。
でも……
女装はとけないし、外にも出させてもらえないし、何よりすることないし。
明らかに無駄な時間を過ごす俺と莉央さん。
オレンジジュースの入っていた紙コップが、テーブルの上に重ねてある。
俺の胃袋はオレンジジュースでたぷたぷ。
もう一滴たりとも入らないだろう。
と、なると。
マジで何もすることがなくなった。
「そーだっ!翔たんとこ行こぉ?」
「兄貴のとこですか?」
「まだ取材中だろうし、笑顔振りまいてるレアな翔たん、間近で見れるよ」
「………。」
麻実さんじゃないけど、写真撮って売ろうかな。………組のみんなにでも。あ、意外と祐希とか好きそう……
「行きましょう」
「…なんでだろう、恭ちゃんが考えてることわかっちゃったかも」
苦笑いしてる莉央さんを引っ張って、ロビーを出た。
このホテル、どこまでも城にこだわってるみたいで。
ロビーにもシャンデリアがあるくらいだった。
さっきのコンテストもメインホールとかいうとこだったし…ってかメインホールってことはサブもあんのかよとか思ったり。
何が言いたいかって、商店街のど真ん中にあるには広すぎるんだよ。
もっと簡単に言うと。


