「あそこ、見てみてください」
兄貴を凝視してた俺だけど、麻実さんに言われて目線を移す。
そこには何やら、兄貴を指差して話す、男が2人。
「彼らはスカウトマンね。コンテストが終わったら彼を、いや、翔子ちゃんをスカウトする気よ」
スカウト?
待てよ。
兄貴がスカウトされる→契約金提示→交渉→それなりの額になる→契約成立→まず最初の仕事→写真集!?
「わかった?あなた達の写真集が世に出るのはもう決定事項なの」
「………。」
この女…兄貴の行動パターンまで計算してっ…!?
さすが年上。ただの素を隠しきれないバカじゃないらしい。
「でも。それに俺が出なきゃいけない理由がないです」
たとえ兄貴がモデルになったとしても、な。
「彼は金の亡者なんでしょう?だったら1人より、2、3人で色んなパターン撮った方が売れるって考えるんじゃないかしら。ってかあたしならそうするし?」
……何も言えなかった。
実際、兄貴ならそう考えるだろうし。
ってか麻実さんが兄貴の行動パターンまで計算出来るのは、自分もそうだからみたいだし。
そうなると、それは兄貴からして正論なわけで。
やっぱ俺に逃げ道なんて用意されてないらしい。


