ずっと言いたくて
でも
ずっと言えなくて
そんな想いだったのに

蒼井のことを話してくれた時、寂しそうに見えた入江先生に言いたい
そう思った。

同じ数学教師として従事している今、
高校生の頃よりかは近付いたであろう入江先生との距離が
どうなってしまうのかなんて
後先なんてもう考えられなかった


でも

「・・・・・」


黙ったままの入江先生が
何を考えていて、次に何を語るのか
不安になった


「高島。」

『は、ハイ。』

「ありがとな。嬉しいよ。」

『い、いえ。』


いつも、仕事中に会話する入江先生とは明らか異なる
あたしの様子を伺うような彼の声色。

それに同調するように
あたしも声が震えてしまう。

そんな中でも自分の頭の中では必死に考えてしまう。

スキですと言って
ありがとうと言われるのは
どう解釈すればいいのだろう?

嬉しいというのも
自分の思いが成就したのかもと
勝手に思ってしまう

いいのかな?
あたしも嬉しいって思っても・・・



「でも・・・な。」


少々浮き足立っていたあたしの心は
入江先生の言葉の続きによって
あっという間に不安な気持ちに引き戻された。