そのせいで

『入江先生、こっち向いて下さい。』

「ん?こっちか?」


夜空を見上げていた入江先生は不思議そうな顔であたしのほうを向いてくれた。



『あたしを見て下さい。』

「・・・見てる・・けど?」

両肩に力が入りまくりのあたし
あたしが醸し出す、いつもと違う空気を感じとったのか
どうしたんだ?と言いたそうなそんな瞳で。

『蒼井じゃなく・・・あたしを。』

「・・・・・」


ちょっぴり戸惑い始めたらしい入江先生に気遣うことなんてできないぐらい
高校時代、蒼井の先輩だったあたしが抱くことができなかった
嫉妬という感情が

『あたしもやっぱり一歩進みます。』

「・・・・・」

『先生が蒼井に出会う前から、ずっと・・・入江先生のことが好きでした。』

とうとうあたしを大きく動かした。