『そうなんですか。でも、どうして・・・』


具体的な返答があたしの中で高校生のままだった蒼井を
同世代の女性へと変化させた。

なぜ蒼井と会うことになったんですか?
そう聴きたくなるぐらいに。


そうやって一歩踏み出したはずのあたしだったのに
いざとなると聴けなかった。

仕事上の関係とはいえ
あたしの隣にいる入江先生が
蒼井の今を聴くことによって
あたしから離れてしまう気がして・・・


「俺の母親が自転車を転倒させて骨折し運ばれた病院。そこでのリハビリ担当・・・それが蒼井だった。」

『そんな再会・・・あるんですね。』


さっきよりももっと具体的な入江先生からの答え。

そんな再会
そんな偶然

そしてそれはもしかして
そんな必然なのかもしれない


「俺も驚いた。声をかけられるまで気が付かなかったし。」

『きっと見た目が変わっていたんですね。』

「ああ。見た目だけじゃなくて・・・・」

言葉を紡ぐのを止めた入江先生は
星がより一層キレイに見える澄んだ夜空を見上げた。

暗くてその表情をはっきりと捉えることはできなかったが
聴こえてしまった小さな溜息が
冬独特の透き通る冷たい空気に溶けた。


『・・・・・?』


見た目だけじゃなくて・・・の続きを言うことを止めた入江先生が寂しそうに見えたのは
あたしの気のせいなのかな?

未だに入江先生にこんな想いまで抱かせている蒼井が
本当に羨ましく思えた。