入江先生が最近知ったという
蒼井のその一歩は
どんな一歩なんだろう?
高校時代の
入江先生と蒼井の関係
それは
バレー部の顧問と部員という関係
ただそれだけだったのはず
でも
ふたりはきっと惹かれあっていた
入江先生のことが好きだったあたしが
入り込める余地なんか感じられないぐらいに
ただ、惹かれあっているという状況を
当の本人達は理解しようとしなかった
多分、教師と生徒という立場が
そうさせたんだと思う
でも、今は
教師と生徒という関係じゃない
そのふたりが再会してしまった
あたしが気にしたって
どうなるものでもないけれど
それでもあたしは
『どう進んでいたんですか?』
聴かずにはいられなかった。
ここでその話を聞き流すような真似をしたら
もう二度とふたりの関係を聴くことなんて
できないと思った。
あたしは
自分の胸に無理矢理押し込めたままの
嫉妬という感情を
今、引っ張り出してこないと
あたし自身、一歩前に出るなんてことなんてできない
そう思った。
そんなあたしの勇気を感じ取ったのか
「蒼井は・・・・」
入江先生はそう言いかけて、ふっと微笑む。
そして
「浜松西総合病院で理学療法士っていうリハビリのスタッフとして従事している。」
生徒と向き合う時のような優しい顔で
ちゃんとあたしの問いかけに丁寧かつ具体的に答えてくれた。



