『入江先生!!!!』
「大丈夫だよ。アイツがやっとの想いで捜し出した彼女だから。そんな真似はしないだろう。」
なんとかしなきゃという想いを込めて彼を呼んだのに
焦る様子なんか全く見せなくて。
その上、彼はレザーショルダーバックからスケジュール帳を取り出して、そのうちの1ページをゆっくりビリビリと引き千切った。
そしてスケジュール帳に挟んであったボールペンを千切った1ページの紙を併せてあたしのほうへ差し出した。
「もっと相応しい紙があればよかったんだけど、急な話でな。」
首を傾げながら私に苦笑いをしてみせた入江先生は
後部座席に置いてある見覚えのある大きな箱を指差した。
「まだ会ったことないのに、こんなことをお願いして申し訳ないんだけど・・・・よかったら、彼らに結婚おめでとうメッセージを書いてやってくれる?」
ウエディングドレス
結婚おめでとうメッセージ
でも
駆け落ちカップル
駆け落ちっていうのがなぁ
完全にワケありでしょ?
それをおめでとうなんて
言ってあげてもいいのかな?
どう書いていいのか
わからないってば・・・・
『入江先生が先にメッセージ書いて下さいよ!なんか難しいです。』
差し出されたままのスケジュール帳を千切った紙とボールペンを両手ですうっと押し返した。
「ああ。そうだよな。それじゃ、書くけど・・・確かに難しいよな。」
ペン先を紙にのせては外すを繰り返す入江先生。
ふうっと息をついた後にとうとうペン先を走らせた。
【次の設問に答えよ。「医師としての腕は確かだが、恋には不器用な男の手をもう離さない方法をこの箱の中に入っているモノを用いて証明せよ。」 (2019 Irie 出題)】



