7月中旬。


はじまりは、ほんの些細なことだった。

わたしが働いている飲食店にくる、ただのお客さん。

ただの、そう思っていたお客さんから声をかけられたことからはじまった。

その人はそのころから週4くらいで顔をだすようになったいわゆる常連さんになっていた。


「仕事、いつも頑張ってますよね」

「え?」

「俺、いつも思うんですよ。頑張ってるなって。仕事終わってもここくると元気もらえるんですよね」

「そうなんですね、ありがとうございます」

「いやいや。俺のほうこそありがとうございます」


きっとはじめは、こんな会話だったと思う。

でもその頃から頻繁に声をかけてくるようになって、わたしはいつの間にかその人のことが気になっていた。