社長の溺愛にとかされて

慎也は、私を裏から抱きしめられるようにして座った。
それだけで、安心感に包まれるのが分かる。

慎也は私の手を取り、ゆっくりと指を絡ませる。

2人が繋がっていくようで、その手の感覚に、
言いようのない幸福感を感じる。

「本庄さんの事、大丈夫なの?
 いつまで、ご両親誤魔化す予定なの?」

慎也は「うーん」と唸り、暫く間を置いて話し出した。

「今の所、半年持てばいいと思ってる、
 それから二人でアメリカに行くって」

「え?それって駆け落ち?」

驚いて裏を向こうとしたが、絡めていた指を外し、
ぎゅっと強く抱きしめられてできなかった。

「そうなるな」

へえ・・・と、考える。

「優秀な人材がいなくなるのは辛いが、
 彼の能力を買ってくれそうな会社はいくつか当たっているし、
 彼女の方は英語もペラペラだから、ま、なんとかなるだろう」

全てを賭けて、2人で生きる事を選んだ2人。
絶対上手くいって欲しいと思う。