社長の溺愛にとかされて

「これ・・・」

床に置いてある婚姻届を慎也が手にする。

「破ろうかと思ったけど、できなかったの・・・」

「そうか」

しんみとした声で慎也が言う。

「馬鹿かもしれないけど、慎也を信じたかった」

その言葉にぎゅっと抱きしめられる。

「慎也と一緒に生きるのが、
『自分が一番行きたい道、自分が一番後悔しない道』だから、
 どうしても慎也がいいから・・・」

そう言うと、おでこにちゅっと音を立ててキスされる、
そして、ほっぺ、左の手のひらと順番に唇を落とされる。

私は慎也の左手を両手で持って、左手にある指輪を確認する。

「良かった」

慎也は床に落ちていた、私の指輪を拾って、
ゆっくりと私の左薬指に入れる。

そのゆっくりとした動作が、神聖で、確かな約束を感じられる。