「とりあえず、家を探さないと」

マナは住宅街へと進む。運よく空き家が見つかり、マナはそこで暮らすことを決めた。レンガ造りのおしゃれな家で、空き家とは思えないほど綺麗な見た目をしている。

術をかけ、鍵を開ける。部屋の中には当然家具はなく埃が部屋の隅に積もっていた。マナは術をかけて部屋を綺麗にしていく。埃は一瞬にして消え、ソファなどの家具が空中から現れた。それを丁寧にマナは部屋に置いていく。

「あとは、この住宅街にも……」

マナは市民の格好から天使の姿に変わり、ふわりと翼で空へと飛び出す。幸いにも住宅街には誰もいなかった。

「私は、ずっと前からここに住んでいた」

そう呟くと、マナの手から白い光の粒があふれ出す。それらは雨のように住宅街に降り注いでいった。

光の粒を落とし終えた後、マナはそっと家の中へと戻った。



マナは、日本からカナダに移住したという設定になっている。家族はオタワに住んでいるが、仕事のためにバンクーバーに来た、そうマナは近所の人に言った。

偽りの笑みを浮かべ、近所の人の話に付き合う。天使と関わることで人は癒される。特別なことは何もしなくていい。