マナは日本に行く予定だったのだ。マナは、人間界ではアジアに行くことが多い。アメリカやヨーロッパに行くと子どもと勘違いをされ、面倒な事件に巻き込まれたことも多々あるからだ。

しかし、今自分がいるのは日本ではない。金髪の人が何人も歩いている。そして聞こえてくる言語は英語だ。

マナは、「すみません」と旅行客のフリをして近くにいた男性に話しかける。ちなみに天使に言葉の壁は存在しない。

「ここはどこですか？」

「バンクーバーだよ」

マナは嘘だと思いたかった。バンクーバーはカナダの都市だ。日本からは当然遠く離れている。

どういうことかと混乱するマナの耳に、「ザマァ〜！アンタの仕事は私がもらったから〜」と天使のガブリエラの声がした。

マナは頭を抱える。地図を留守にしている間にすり替えられていたのだ。全く気付かなかった。

しかし、このまま天界に帰るわけにもいかない。マナはカナダの人を癒して帰ろうと決めた。人を癒すように神様から言われたのだ。仕事をしなければならない。