マナがカナダで暮らし始めて、二年。マシューは相変わらずマナを誘ってどこかへ遊びに行く。しかし、マナはマシューと遊びに行くことを楽しみにしていた。
今日は、ギャスタウンを訪れていた。石畳の道路が広がり、レトロな雰囲気の中で買い物を楽しむことができる。
「マナ、行きたいお店があったら言ってね?」
まるで恋人に話しかけるようにマシューは言う。しかし、悪くないとマナは思った。
「私、こんなところに来るのは初めて」
多くの人で行き交う道を見て、マナは言う。天界にもこんな場所はあったが、マナの東洋人のような顔立ちが目立ってしまうために行ったことなどなかった。
「じゃあ案内するよ」
マシューはそう言い、マナの手を握る。初めて人とつないだ手はとても温かく、マナは驚きを隠せなかった。
「人ってこんなに温かいんだ……」
そう気付いた刹那、マナは泣きそうになるのを堪える。マシューよりずっと長く生きているのだが、大切なことは何も知らない。温もりも、愛も、幸せという感情も……。


