感傷に浸っていると、階段から駆け上がる足音がする。
普段は放課後4階に来る人なんていないのに…。
机から起き上がり、廊下を覗くためにドアに手をかけると、ドアが勝手に開いた。
「えっ…わっ!」
「うわっ、ごめん…!」
びっくりして、自分の足を引っ掛けて後ろにバランスを崩す。
コケるっと思ってぎゅっと目をつぶった。
「あっ…ぶなぁ」
床に尻もち打つ感覚がなくて、そっと目を開ける。
「大丈夫…?」
「…へ?」
目の前には、3年を示す深緑色のネクタイが見えて、混乱する。
間抜けな声出ちゃったし…。
それに腰に、手が回されている感触がして…。
えっと…?
「ごめんね、立てる…?」
「あっ、はい」
自分の足でちゃんと立ち、制服を整える。
……たぶん、コケそうになった私を支えてくれたんだよね…?
腰に手、まわされたけど。
一気にぶわっと何故か恥ずかしさが込み上げてきた。
「ほんと、ごめんね。俺がいきなりドア開けたから」
「…いえ、ありがとうございます」
恥ずかしさで、顔を上げれない。
すると、階段からまたドタドタと駆け上がってくる足音がした。
「…あいつ、はえーな。……あのさ、ちょっと匿ってくんない?」
「へ?」
「後で、説明するから。お願い!」
「え、あ、じゃあ準備室に隠れててください…?」
何が何だか分からないけど、一応準備室に隠れるように言った。
準備室のドアを閉めると、
バンッと勢いよく美術室のドアが開いて、
肩がビクッとなってしまった。
「あ、人がいたんだ。ねね、ここにさ3年の男子来なかった?」
美術室内を歩き回る同じく3年の先輩。
さっきの人探してるんだよね…?
でも、匿ってって言われたし…。
「あぁ、窓から出て、外廊下を走っていきましたよ」
さらっと口から嘘が出る。
「まじ?ありがと」
そう言って、外廊下を走って行ってしまった。
なんか、罪悪感が、あるようなないような…。
そーっと準備室のドアが開き、助けてくれた(?)先輩が顔を少し覗かせた。
「あいつ、もう行った…?」
「行きましたよ」
「ん、ありがとう」
ちゃんと行ったか確認するためか顔だけ出して周りを見回してから準備室から出てきた。
「ほんとに、ごめんね。巻き込んで」
「いえ、大丈夫で…」
ずっと下を見てた顔を上げる。
やっと話してた先輩の顔を見たわけで…。
「ん?どした…?」
…うっわ、イケメンだわ。
クール系のかっこよさじゃなくて、ふわふわ系っていうか爽やか系っていうか…まぁ、そっち方面のイケメン。
とゆーか、なんか言わなきゃ…。
えっと…。
「え、えっと…。イケメンですね…?」
「……」
「……」
…沈黙。
いや、何故か口走ってたっていうか…。
なんか、返事しなきゃと思ったら、
無意識に思ったことが口に出たというか…。
すっごく、恥ずかしい…。
こんなにテンパることってある…?!
「…え、ぁ、すみませ…」
「…ふはっ!あはははっ!」
なんともいえない雰囲気になって、謝ろうとしたら、先輩が吹き出した。
「え、あの…?」
手で口をおさえ、笑いを堪えようとしてるけど出来てない。
私のことで笑ってるんだろうけど…。
「…はぁ、むっちゃ笑ったわ」
「でしょうね。むっちゃ笑われました」
「ふはっ…ちょ、もうやめてっ」
「ふっ…あははっ!」
また笑い始めるから、私まで面白くなってきてしまって笑い始めてしまった。
「「…はぁーっ」」
「え、」
「あ、」
落ち着くための深呼吸がかぶってしまって
2人とも顔を見合わせて小さく笑った。