酒に女に煙草に、
気づかない内に溺れてゆく。
朝起きると隣では何故か
名前も知らない見た事もない輝きが寝ていた。
不健康ではない細さに浮き出る背骨を見ながら
また煙草を吸った。
洗面台の鏡に写る自分の姿に嫌気が指すのも
もう慣れたような気がする。
酒の瓶を転がす度、煙草の箱を捨てる度、
知らない女が隣に居る度、
煙にまかれて消えたくなる。
その場からすぐさま、自分の全てをみなくていい所へ。
向こうの部屋から寝返りをうつ音が聞こえる。
裸で寝ていたそれはさながら天使のようだった。
プライドも何もかもを捨てた天使と
プライドも何もかもを捨てた廃れた男が、
身体だけを重ねている。
『お前みたいなやつには抱かれたくない。』
『お前みたいなやつとは寝たくない。』
そんな言葉を浴びせられる側になるとは思わなかった。
転がったビール瓶に残った少しのそれを飲み干す。
天使が起きないうちにここをでる。
さようなら自分よ。
さようなら天使よ。
さようなら人生よ。