教科書を見ながら何やら話している教師の言葉を右から左に聞き流し、由良は窓越しに移る景色を眺めた。代わり映えの無い千切れた雲が薄い青空を誰に支配されるでもなく流れている。それを見たからといって何かが変わるわけではない。ただいつも通りの時間が流れ、いつも通りに過ごし、いつも通りに一日を終える。
そんな日常に由良は嫌気がさしているわけではなかった。
日常が変わらなければそれはそれでいい。平和に過ごすことに不満があるのではない。ただ、満足に有りのままで過ごすには今の由良にとって、この世界は相応しくなかった。いや、許容されていないのかもしれない。世界にとって由良は異物で有りのままで過ごせば、この世界に暮らす人々が牙を向けるだろう。異端児として。
だからこそ由良は他人に不干渉であり、拒絶する。しかし、幼い頃から孤児院で共に育ってきた柚燐にはそれは当て嵌まらない。唯一、由良の身体能力を知り理解してくれる。かけがえのない存在であった。
愁いの顔で窓を眺めていた由良は昼休みになると、一人席を立って閉ざされている屋上への階段に向かった。扉の前まで来ると、予め職員室から入学当初拝借し用意していた鍵を南京錠に差した。カチッと音が鳴り、屋上の扉を開けて入る。
奥のフェンスまで歩いて行き、背をあずけてもたれかかった。風が前髪を弄ぶように揺らす。
昼は常に由良は屋上に来ていた。そして、此処に来ると日課として身体を動かしている。
由良は軽く地面を蹴った。それだけのことなのに五メートル以上も飛び上がり誰の目にも身体能力の異常さが見て取れる。
着地して今度は入り口の上に貯水タンクが置かれた場所まで勢いよく地を蹴った。瞬く間に到達し、やはり人間としての限界を越えている。
その後も軽く運動して昼休みが終わり教室で授業を受けて、今は放課後であった。
柚燐を先に帰らして一人考え込んでいた由良は、窓から差す西日に目を細めて学校から帰る。
通学路を一人で歩きながらつい先日奇妙な本屋の主人との会話を思い出していた。先程まで考え込んでいたのもその主人から貰った本についてのことだった。
いつも閉まっていたはずの場所が偶々開いていたのが事の発端になっている。
そんな日常に由良は嫌気がさしているわけではなかった。
日常が変わらなければそれはそれでいい。平和に過ごすことに不満があるのではない。ただ、満足に有りのままで過ごすには今の由良にとって、この世界は相応しくなかった。いや、許容されていないのかもしれない。世界にとって由良は異物で有りのままで過ごせば、この世界に暮らす人々が牙を向けるだろう。異端児として。
だからこそ由良は他人に不干渉であり、拒絶する。しかし、幼い頃から孤児院で共に育ってきた柚燐にはそれは当て嵌まらない。唯一、由良の身体能力を知り理解してくれる。かけがえのない存在であった。
愁いの顔で窓を眺めていた由良は昼休みになると、一人席を立って閉ざされている屋上への階段に向かった。扉の前まで来ると、予め職員室から入学当初拝借し用意していた鍵を南京錠に差した。カチッと音が鳴り、屋上の扉を開けて入る。
奥のフェンスまで歩いて行き、背をあずけてもたれかかった。風が前髪を弄ぶように揺らす。
昼は常に由良は屋上に来ていた。そして、此処に来ると日課として身体を動かしている。
由良は軽く地面を蹴った。それだけのことなのに五メートル以上も飛び上がり誰の目にも身体能力の異常さが見て取れる。
着地して今度は入り口の上に貯水タンクが置かれた場所まで勢いよく地を蹴った。瞬く間に到達し、やはり人間としての限界を越えている。
その後も軽く運動して昼休みが終わり教室で授業を受けて、今は放課後であった。
柚燐を先に帰らして一人考え込んでいた由良は、窓から差す西日に目を細めて学校から帰る。
通学路を一人で歩きながらつい先日奇妙な本屋の主人との会話を思い出していた。先程まで考え込んでいたのもその主人から貰った本についてのことだった。
いつも閉まっていたはずの場所が偶々開いていたのが事の発端になっている。



