「うちの組の藤田がですか?」

諸口は驚いて聞き返した。

「うちに来てくださっている英語の先生がおっしゃるにはね。
 似た子が駅前にいたと」

応接室の外に声が漏れていないか気にしつつ
生徒指導の新村が言った。
諸田は、声を大きめに続ける。

「しかし、やんちゃな奴らとつるんではいますが
 それほど問題を抱えた生徒には思えませんが……」

諸口は眉を寄せる。
新村は人差し指を唇の前に立てる。

「聞こえますよ。諸口先生。
 少なくとも変わった家庭の子です。」

諸口は、ムッとして言い返した。

「母子家庭がダメだって言うんですか?」

新村は静かに

「母子家庭は、問題ではないですよ。
 でもお母さんが少し変わった方です。」

と言った。


「諸口先生、担任ですし藤田君にきちんと話してみてください。
 正直には言わないかもしれませんが」

そういって新村は席を立った。
諸口は頭を抱えている。

「……藤田が……?」