彩華は祈夜に感謝しながら、少しだけ状況を説明した。
 彼が別の仕事を教えてくれない事、家に呼んでくれない事。
 自分に好意を持ってくれていた人にこんな事を話していいのか?と悩んでいると、祈夜は「いいから」と言って話を最後まで聞いてくれた。
 おいしそうなプレートが運ばれてきた。「大人のお子さまランチみたいでしょ?ゆっくり食べてね」と、祈夜の兄も気を使ってくれたようで、少し離れた場所で作業をしてくれていた。


 「って、感じなんだけど…………男の人としてはやっぱり話したくない事もある?」


 ご飯を食べながら話し終わると、祈夜は少し顔をしかめた。そして、「んー………」と唸り声を上げた。そして、少し考えた後、祈夜は口を開いた。


 「まぁ、ぶっちゃけ俺も話しにくい理由があるから、わからなくもない。けど、話をしなきゃいけないとは思うよ。恋人として付き合っているんだ。遊びじゃない。………それなら、話した方がいいって思う」
 「………話したくない理由はわかるんだ」
 「俺とその男が同じ理由かどうかはわからない。けど、話したくない事の1つや2つはあると思う。けど………好きな人を悩ませたり悲しませたりするなら、話したほうがいいと思う。それで終わってしまうようならば、きっと話さなくてもいつかは終わってしまうと思う」
 「そうだね……」


 解決策ではない。
 けれど、1人の男の人の意見として、彼の話しを聞けたのは彩華にとってとても大きかった。

 確かに話しにくい事は誰でもある事なのかもしれない。秘密を持っていない人間などいないのだから。
 それをわかった上で、自分の気持ちを伝えて葵羽に聞いてみよう。そう思えたことで、彩華は肩の力が抜けたのを感じた。


 「………祈夜くん、ありがとう。話しを聞いてもらえて、すごく安心したわ。」
 「………彼氏の事、好きなんだな」
 「うん。大切だし、大好きだよ」
 「なら、大丈夫だろ」