「皆さん、大きくなりましたね。子どもにとって1年はあっという間ですね」
 「はい。みんな元気に大きくなってくれて安心してます。元気すぎますけどね」


 遠くで大きな声で走り回る子ども達を見て、彩華は苦笑してしまう。
 今年度、彩華は去年担任をしたクラスを、持ち上がりで担当することになったのだ。今は4歳児クラスだ。来年は保育園では1番大きいクラスになり卒園児となる。それに向けて大切な時期なので、彩華は子ども達にいろんな経験をして欲しいと思いながらも、お兄さんお姉さんになる自覚をもって欲しいと日々奮闘していた。

 子ども達と散歩に来ると、いつもお話をする事が出来るけれど、お互いに仕事中だ。特に子ども達は目を離した隙に何をするかわからないので、しっかりと見守っていたければならない。
 葵羽との時間を楽しみたいと思いつつも難しいのが現状だった。また、今度仕事終わりに遊びに来ようとここに来る度にそう思ってしまう。


 「彩華先生ー!これ松ぼっくり?」
 「あら………これは………松ぼっくりになる前の赤ちゃんかな?」


 子どもが持ってきたのは、松ぼっくりが開いていないのだ。こういうものは、開く前に落ちてしまったのだろうと、彩華は思っていた。

 すると、葵羽が「あぁ………それは……」と、子ども前にしゃがみ込んで話しを始めた。


 「それは雨で濡れてしまって冷たくなってしまったんだろうね。太陽に当ててあげると、温かくて開いてくれるよ」
 「わぁーそうなんだ!神様の人、ありがとー!」
 「どういたしまして………」

 
 葵羽は少し驚いた表情になりながらも、去っていく子どもに手を振っていた。
 彩華が葵羽に近づいて、お礼を言った。