そんな心配事がありながらも、少しずつ寒さも深まり、落ち葉もすっかり木々から落ちてしまい、少し寂しい季節になっていた。
 けれど、それと同時に街はカラフルに彩られている。12月はクリスマス。赤やゴール、緑などの色、そしてイルミネーションで街はきらびやかに飾られ始めていた。 


 その日も彼とのデートで少し離れた街へと行く事になっていた。
 仕事が早番だったのだが、葵羽から「仕事で遅れそうなので、1度家に帰ってもらってもいいですか?自宅へ迎えにいきます」とメッセージが入っていたのだ。
 師走に入り忙しいのだろなと思い、彩華は彼に返信をしてから自宅に帰宅した。

 
 しかし、外食の予定の時間に間に合わないという事で、外食はキャンセルになった。そのため彩華は、自宅で夕食を作り葵羽を待っていた。

 すると、待ち合わせの予定から1時間以上遅れて彼が彩華の家に到着したのだ。
 車でこちらに来た後、走ってきてくれたのか、コートも手にもって顔には少し汗をかいている。


 「すみません………せっかくのデートだというのに遅れてしまって」
 「いえ………忙しい時に時間をつくってもらっていたので。それに、急いで来てくれたんですよね。ありがとうございます」


 そう言っても、彼は申し訳なさそうに「すみません」と何度を言っていた。
 しかし、彩華は葵羽を見て驚いてしまった。葵羽はいつもの私服とは違い真っ黒なスーツを着ていたのだ。
 細身のシルエットのシャドーストライプが入った黒スーツに白のワイシャツ、チェックのネクタイという格好だった。いつもとは違う雰囲気を感じるた。大人の男性というのがとてもよく感じられ、色っぽく見えてしまうのは彩華だけではないはずだ。

 彩華は、いつもとは違う雰囲気の彼を直視出来ずにいると、葵羽は心配そうに彩華の顔を覗き込んだ。