「すみません。ぶつかってしまって」
 「いえ、大丈夫でしたか?」
 「私は大丈夫です。花を取ろうとして………」
 「あぁ、ブーケですね。そのミニブーケってお手軽だし可愛いですよね」


 同じぐらいの歳か、少し年上だと思われる男性はとても綺麗に微笑むと、彩華が取ろうとしたミニブーケを2つ取ってくれる。
 サラサラとしか髪はとても艶があり、男性なのに綺麗だと彩華はつい見入ってしまった。


 「こっちのピンクベースは春の花で作っていますね。もう1つのは霞みそうとブルー系で爽やかに少し梅雨っぽいイメージかもしれません」


 ミニブーケの説明をしてくれる彼は店員だったのかと、彩華は思いその男の説明を聞きながら花を選ぶことにした。


 「あまり花を買わなくて……このブーケだとどれぐらいもちますか?」
 「新鮮な水に交換したりと、適切な方法で見てあげれば長持ちしますよ」


 そういうと、その男性はとても愛おしい物を見るように目を細めて花の話をしてくれた。きっと、彼は花が大好きなんだろうな、と彩華は思わず笑みをこぼしてしまった。
 すると、それに気づいた彼はハッとした表情になり、「す、すみません……花の事になると、少し夢中になってしまって」と苦笑した。