「怒ってくれればそれでおしまいだったけど……2人共、優しいな……」


 そう思いながらも、彩華はまたため息をこぼした。

 が、不意に華やかな香りが鼻から体の中を巡った。
 いつもならば素通りする、帰り道の花屋。そこからとても花の甘い香りがしたのだ。
 

 「花、か………」


 彩華は帰り道を急いでいた足を止めてその店を見つめた。最近は気分も落ちていたので、家に花があると少しは前向きになれるだろうか。そんな風に思い、その花屋に足を向けた。


 小さな店内には、沢山の色や形と花達がところ狭しと並んでいた。自分がどんな物が欲しいのなもわからずに、花に囲まれながら悩んでしまった。
 すると、店の奥にミニブーゲがあった。それなら値段もお手頃であるし、いろんな花があり見た目も華やかになるなるのではと思い、手を伸ばした。すると、彩華の大きな鞄が何か当たってしまった。
 咄嗟に振り返ると、そこには華奢な男性が立っていた。白いシャツに黒いズボンというシンプルな服装をうまく着こなしており、綺麗な顔には黒のフレームのメガネをしていた。

 彩華は彼とぶつかってしまったのだとわかり、すぐに男性に向かって頭を下げた。