「な、何で笑うの!?……そりゃ、勘違いしたのは恥ずかしいけど笑わなくても……!」
 「だって、やっぱり彩華は変わってるって思ったから」
 「そう、かな?」
 「そうだろ。エロい本が彼氏の部屋から出てきたのに、趣味や仕事を疑ったりしないで、中身を確認して自分と比べるなんて。なかなかいないだろ」
 「…………変かな?」
 「いや。俺は好きだよ。そういう所も」
 「…………本当に?」


 彩華が疑いの目で祈夜を見ると、彼は「本当」と言って、片手で彩華の頭に手を回すと、そのまま自分の方に引き寄せた。


 「どんな趣味も仕事も自分なりに受け止めようとしてくれる所とか、漫画本の相手に嫉妬しちゃう所とか。………嬉しい」
 「………本当に巨乳好きじゃない?」
 「まだ言うのか。……ったく」


 真面目な話をして彩華を褒めるので、彩華は照れ隠しでそう言うと、祈夜は苦笑しながら彩華をその場にゆっくりと押し倒した。
 そして、優しく彩華の左胸に優しく触れた。服越しだというのに、彼が触れているところがじんわりと暖かくなるような気がした。


 「俺は彩華がいいだ………。それにさ、確かにさっきのエッチな漫画みたいに彩華を求める事もあるけど………。俺は、描きたいのはさっきみたいな綺麗な女性の体と、恋人とのやり取りなんだ。だから、いろいろ裸のシーンを描いてるものを見てるってわけ。本当の裸体を見るのが1番だけど……まぁ、いろいろと難しいしな」
 「……………」



 彼は作品を仕上げるためにそうやって、勉強しているのだ。他の人から見たら「えっちな事をしている」と卑猥なイメージがある事かもしれないけれど、彼はしっかりとやりたいことを見据えて、そのために努力しているのだ。
 そんな祈夜にあの漫画を見ていたからと非難出来るわけもなかったし、するつもりもなかった。

 祈夜がどんな作品を完成させるか。彼がそれを自信を持って発表できるか。
 それが何より大切だと思った。

 そんな事を考えていたからだろうか。彩華は考えるよりも先に思い浮かんが事を口にしていた。


 「………そのモデル、私じゃだめかな?」


 この言葉を聞いて驚いたのは、祈夜より彩華自身だった。