「私も漫画本よく読むし、好きだよ。だから、男の人が読むのがどうだって……あんまり思わないかな。可愛いものが好きな男の人もいるし、逆にかっこいい物が好きな女の人だっているよ。………私が今笑ったのはね………祈夜くんの新しい一面が見れて嬉しいな、って思っただけだから」
 「…………」


 祈夜はポカンとした表情を見せた後、クククッと笑い始める。それは彼が喜んでいる時だと彩華はわかっている。


 「やっぱりおまえは変わってるな。普通ならひくところだぞ」
 「そんなことないと思うけど………」
 「………彩華、これから時間あるか?」
 「うん……仕事は終わったから大丈夫だけど」
 「おまえに話したいことあるんだ」
 「………わかった」


 彼が何を話すつもりかはわからない。
 けれど、偶然出会った事で、彼の新しい側面を知れただけではなく、久しぶりに一緒に居れる事になり、彩華はそれだけで寂しさが吹き飛んだのだった。




 彼が連れてきてくれたのは、祈夜の家だった。リビングやキッチンは前に来たよりも荒れていて彼が忙しくしていたのがよくわかった。
 いつものようにリビングに通されると思ったけれど、祈夜はいつもと違う場所に案内してくれた。
 そこは、祈夜が作業場と呼ぶ部屋だった。いつもは「荒れてるから」と見せてくれなかった場所。その扉の前に立って、祈夜は「ここは俺の仕事部屋だ。………彩華に見せたいんだ」と、言ったあと、ゆっくりとドアを開けて彩華を招いてくれる。