酔っぱらっていた頭の中が覚めていく。
 茉莉の考えを聞いて、いかに自分が冷静ではなくなっていたのかがわかった。彼女の言った通り誰でも忙しい時期があり、余裕がなくなると誰とも連絡を取れない時だってあるのだ。
 そんな事もわからなくなるぐらいに、彼に甘えていた自分か恥ずかしくなった。


 「………そうだね。少し待ってみる」


 空になったグラスを持ちながら彩華が小さな声で呟くと、茉莉は苦笑しながら彩華に優しく話しかけた。


 「初めての経験なんだから、不安になるのも仕方がないよ。今は我慢して、その気持ちを祈夜くんに伝えればいいよ。そしたら、きっと彼もわかってくれるはずだよ」
 「………うん。ありがとう………」


 初めての恋愛で困っているときに、こうやって優しく教えてくれる友達がいる。茉莉の感謝をしながら、彩華は彼女にお礼を伝えた。






 茉莉のアドバイス通りに彩華はなるべく彼に連絡をしないようにした。もちろん、「無理しないでね」と仕事を応援してはいたけれど、そのメッセージの返事もいつも遅かったので、彼はよほど忙しいのだろうとわかった。
 彩華は祈夜の事を考えすぎないように仕事に没頭した。と言っても、年末は保育士の仕事が忙しくなるのも同じで、平日はボロボロになるまで働いた。週に1回、月夜のお店に行ってご飯を食べていたけれど、今週はその頻度が多かった。平日に終わらなかった仕事は休みの日にやる事になり、彩華は休みの日も自分の部屋でパソコンとにらめっこをしていた。