「祈夜くん?どうしたの?」
 「………俺、おまえの事好きだって言ったよな?……なのに、そんな無防備な顔してんなら、襲うぞ」


 苦笑しながらも、少し意地悪な口調で言う祈夜に、彩華は少しムッとしてしまう。
 彼は彩華が葵羽の告白を断ったのを知るはずもないのだから、彩華の気持ちがどう固まったかも想像もしていないはずだ。祈夜の態度は仕方がないとは思いつつも、彩華は大人げもなく、「わかってないんだから!」なんて、思ってしまう。


 「………いいよ……」
 「………お、おまえ何バカな事言って………彩華には好きな男がいるだろ………」


 想像もしなかった返事だったのだろう。
 祈夜は動揺した様子を見せながらも強気でそう言っている。
 けれど、ここまでくると彩華も止められなかった。


 「告白されたんだけど………断ったよ」
 「………え………」
 「私、祈夜くんの事が好きだって気づいたから」


 お酒の力を借りたからだろうか。
 自分でもこうやってはっきりと彼に告白の返事が出来るとは思っていなかった。
 緊張してしまう気持ちはもちろんあった。けれど、早く彼を知りたかった。それに、また手を握ってほしかったし、彼の傍に居たいと思った。そう思ったら、自分の口は勝手に動いていた。

 彩華の顔や耳、首元まで真っ赤になっているだろう姿を、祈夜は驚いた顔で見つめていた。恥ずかしくて視線を逸らそうとも思ったが、彼に自分の気持ちをしっかりとわかって欲しい。その一心で彼の瞳を見つめた。

 すると、祈夜は彩華の熱が移ったように、頬を赤面して「………信じられない」と、髪をくしゃくしゃとかいた。その後、祈夜は彩華に顔を寄せた。