彩華は思わず微笑む。けれど、彼が言った事には賛成だった。
 あの場所で葵羽に会わなければ、きっとこの関係はなかったのだ。そう思うと、少し怖くなってしまうぐらいだ。あの場所であの日に出会えた奇跡に感謝してもし足りたいのだ。


 「そして、何回も言っていますが、私を選んでくれてありがとうございます」
 「私こそ、です」
 「これからきっと、喧嘩もたくさんするでしょうし、いろんな事でぶつかるはずです。………けど、そんな時は出会った日を思い出せば、きっと大丈夫。そう思います」
 「はい」
 「それに………あぁ、これは明日言うつもりだったので、今は内緒でした」
 「え?!……何の事ですか?気になります」


 何かを言いかけてその言葉を飲み込んでしまった葵羽を彩華は見つめ教えてくれるようにせがんだけれど、彼は「明日まで内緒です」というばかりだった。

 彩華は少しむくれて、「いじわるです!」と言うと、葵羽はクスクスと笑って、耳元で「そこも好きでいてくれてるんですよね?」と囁かれ、彩華は顔を真っ赤に染めた。


 「好きですけど、いじわるですっ!」
 「僕はどんな彩華も好きですよ」
 「………ずるい」


 彩華は、この年上の恋人にはいつまでたっても敵わない、そう思った。


 クリスマスイブの日、葵羽にお揃いの指輪と葵羽の部屋の合鍵をプレゼントしてもらい、彩華は泣いてしまう。

 そんな今よりもずっと幸せな未来が待っているのを、彩華はまだ知るはずもなかった。





        (葵羽ルート おしまい)