「この部屋で何かを祝ったり、イベントを楽しんだりした事がないので、クリスマスツリーも何もないんです。だから、一緒にクリスマスツリーやグッツを買いに行きませんか?あ、もちろん、彩華さんが保育園でやってる手作りのものでもいいので………この部屋でクリスマスを彩華さんと過ごしたいです」
 「それは楽しそうですね!お買い物して、装飾も一緒にやるなんて……とっても楽しみです」


 彩華は子どものようにはしゃいで彼の提案に賛成すると、葵羽は嬉しそうに「決まりですね」と言った。

 朝早くに起きたにも関わらず、2人の時間は足りなかった。お互いに仕事に行くのが億劫になりながらも、ベットから出たのはギリギリの時間になってからだった。

 
 不安だった未来と、真実を聞くのが怖かった昨日。
 それが、今日にはこれからは楽しみな事ばかりが予定に入っていく。

 それはすべて葵羽が共に居てくれる時間。




 初めての恋人は優しくてかっこいい年上の男の人。そして、本当はピアノが上手で、ちょっぴり意地悪な紳士様。


 そんな彼を知っているのは自分だけ。
 それが何より特別に感じ、そして彩華にとって最初で最後の恋人になる。



 そんな予感がしていたのだった。